KENWOOD DP-5010の右チャンネルの PCM56Pも、新品(‘NOS石’!^^)をネットオークションで入手でき ― 出品者さんの、最後の在庫とのこと ― 交換した。
上写真は金属の囲いを取って新品に交換したところ。
ノイズの出ていた左チャンネルの PCM56Pを交換したあと、左のほうが音がおとなしくなった感触があり、右のほうが倍音のエッジなどが立つように感じられていた。
交換して、左と同じ感じでまったりした音になり、全体としてやや高域の出きらない、いわゆるカマボコ型のf特感を示すようになった‥‥ように感じる。
これはいちおう予想および期待したとおりで、よかった。一聴してモヤついた感じはあるのだが、よく聴くと細部もしっかり聞こえていて、かつ全体がよくブレンドされた印象だ。
DAC交換前も左チャンネルの微弱ノイズがそんなにヒアリングに影響していたわけではなく、その状態で PHILIPS CD750と聴き比べた場合、音響としては DP-5010のほうが‘立派’なのだが、音楽性…という単語はあまり使いたくないけれど、まさに「音楽を聴く」には CD750のほうが心地よい音を聴かせていた。
DP-5010の左右DACを交換したあと聴き比べると、DP-5010のほうが明らかに音響的にも、鳴る音楽の品位でも上まわった感じがする。
解像感的には、DACの各電源バイパスにチップ・セラミックを配してある CD750のほうが明瞭になっている。
アルゲリッチの伊Ricordi原盤になるシューマン『幻想曲』(RCA)は、倍音の‘ジャリ〜ン’が耳障りすぎるほどのリマスターが気になっていたが、これがほとんど気にならない。
AKB48の『桜の栞』は CD750のほうが味があり、DP-5010ではヴォーカルの「サ行」子音がシャアシャアしすぎたが、これが改善され、多声部がそれぞれ分厚くよく聞こえる。
シンフォニー録音は、しっかり鳴るが、上に書いたように国産機らしくない高音のマイルドさ。私が手を入れるとたいてい反対に音のエッジが立ってくるので、これはナカミチ IA-4sの時にやや似た例外的現象かもしれない。
あるいは、今回手に入れたPCM56Pは2個体とももと実装されていたものより若干出力が小さいのかも?
というのも、交換前は CD750のほうがレヴェルが低いように聞こえていたものが、DP-5010の両DAC交換後、逆転したように聞こえるからである。
だとすると、音質差と感じていたものはレヴェル差だったことになり、機会があればアナログAC出力電圧を測りながら半固定VRで調整するのが理想的だ。
‥‥が、依然として音「質」の問題かもしれない^^。
修理・改造後の DP-5010の‘まったり感’は、DAC、オペアンプともに電源バイパス・コンデンサーにフィルムもセラミックもパラわれていないということから来るのかもしれないが、DACを含むパーツ交換前は、むしろ室内楽の弦なども CD750のほうが‘まったり’だった。
DP-5010の、DAC 2基分のパスコンは、「囲い」の中間にある6.3V470μF 2本(正・負電源)のみで、前にも書いたようにアナログ/デジタルも分けていない。ただし、2本の470μFのリード近くからは、銅箔の給電パターンはアナログ、デジタルを分けていて、せいぜい共通インピーダンスを持たないようにはしてある。
PCM56Pのデータシートの各ピンの接続図には、各電源ピンに1μFのコンデンサーが接続されている。
「POWER SUPPLY CONNECTIONS」には
「These capacitors (1mF tantalum or electrolytic recommended) should be located close to the converter.」とある。
DP-5010の設計はこの指示をほぼ無視しているが、面白いことに(?) バーブラウンの指定も、デカップリングには電解を指定しており、セラミックやフィルムを指定していない。
今回は、元の設計に手を加えず、6.3V470μFのまま、ただし少し低インピーダンスで、音質評価も意外に高いニチコン PWに交換した。
アナログ電源の平滑と、オペアンプ電源の安定化出口は KWにしているので、ニチコンの音質評価の高い組み合わせになり、事実、マイルドだが高弦はとても美しい。
上は交換した右チャンネル PCM56Pの基板裏、ハンダ面。8ピン×2列、いちおうハンダが乗り、ブリッジもない。9ピンのように見えるのは、いちばん左はジャンパー線の足なのである。
2列のピンの間にもジャンパー線の足が見え、これがたしかGNDのはずなので、ここと電源ピンとを小型のセラミックやフィルムでバイパスすることはできる。
また、470μF自体を、秋月で安く仕入れた導電性高分子固体コン・SEPCにしてみる誘惑にも駆られたけれど、KENWOODの元の設計はできるだけ変えずにいきたいので、少し音を聴き込んでからということに。
考えてみれば、バーブラウンのマルチビットDACの‘素’の音を聴けたのはこれが初めてかもしれない。
DENONの DCD-755や DCD-1515ALは、何といっても同社独自の ラムダS.L.C.や Alphaプロセッサーでかなり厚化粧している。
SANSUIの CD-α507がバーブラウンのマルチ・PCM1702だったけれど、あれはHDCDデコーダーでもある特殊なデジフィルを採用していた‥‥音は美しいが面白くなかった。
DENON DCD-755IIも PCM1702で、
面白くない音で落胆したのだったが、やはり PCM1702はスペック的に優れていてもつまらない音なのかもしれない。
(それにしても去年はたくさんCDプレーヤーを落札した。今年の超-激減収は、その天バチ覿面であるのが明白 (T_T;)、もういいかげんにしよう。)
PCM56Pは、スペック的にはともかく、ネット上でなかなか‘名石’の誉が高いようなのだが、聴いてみてなるほどと思った。
「バーブラウンのマルチビットDACの音」を、安価機の設計ではあるが初めてまともに聴いたという所以である。
ナカミチの薄型プリメイン・IA-4sを入手した時は、音も気になる面があったが、電源トランスがびっくりするほど過熱し、「修理」という形で手を入れて、そのあと音質面も「吉」に転じた。
今回の DP-5010もノイズという問題を持っていて、お蔭さまでチップ交換で解決し、しかも通常の私のパーツ交換とは逆に、音はマイルドな方向に推移していて、これも IA-4sの時と同じ。では「吉」になりますやら^^。
PHILIPS CD750も、回転音と音飛びという問題を抱えており、これはコンデンサー交換だけで解決しそうになく、ピックアップ・ユニットの交換となるか…。