Marantz CD5000が意外に(or 予想どおり?)よかったので、いよいよ CD2300(改)を売っ払える状態になり、しかし CD5000だけでは読まないディスクが出てくると困るので、後任の適当なローコスト機を探した。
思いついたのは、マルチビットDAC最終世代で、かつ ALPHAや D.R.I.V.E.がついていないもの、ということで、DENON DCD-755IIをゲット。
DENONの単品最低価格のCDPは、DCD-700番台で、DCD-735のあと、2000年にDCD-755が登場し、DACはバーブラウンのマルチビット最終世代でサイン・マグニチュード方式の PCM1702になる。
この機種は、『FMファン』の、長岡鉄男氏の「ダイナミックテスト」の最終回(2000年第13号)を飾った。長岡氏の逝去に伴う急な打ち切りだった。
当該号は手許にあるが、DCD-735の繊細ながら低音不足の音に対して、十分低音も量感がある、とまあまあの評価だ。
755は2005年にマイナーチェンジして 755IIとなり(CD-R/RWを再生可とした)、これで DENONのマルチビットDAC時代は終焉を迎える。
DENONの方針ではなく、バーブラウンも1ビット方式に宗旨替えし、マルチビットDAC自体が過去のものとなったからである(と考えられる)。
1年後の2006年に、同じシリーズ型番で DCD-755AEが登場しているようだが、デザインが大きく変わっただけでなく、すでに1ビットDACであり、700番台には搭載してこなかった ALPHAプロセッサーの進化型・AL24を搭載し、ここで同じ型番シリーズではあるが、755は大転換しているのである。
今回、なぜ 755IIにしたのかというと、755の基板にある半固定抵抗が、755IIにはないからである(画像省略)。
だからといって 755IIでデジタル・サーボに変わったわけではないらしい。
ジャンク品を修理・調整する場合はこのVRが重宝するらしいのだが、そういう技倆も意思もない私は、完動品を求めたく、そうであればズレる可能性のあるVRはないにこしたことはない。
さて ─ よさそうな出品品はリモコンがなかったので、単品で出品されているものからひとつ落札、完全な形で入手できた。
で、この写真、Marantz CD5000にはどいてもらっているのだが、上の黒いCDPは!?
じつは、入手できた DCD-755IIは問題のない機体であると思われるが、ディスクを入れてTOCを読む時、とくに読んだあとにもどる時らしいのだが、「シュイ〜ン、キュル、キュルルーン!」とそうとうな動作音を発する。
これは仕様であろうし、いったんTOCを読ませたあと頭出しする時にはさほどでもないので、音楽鑑賞に決定的な妨げではないけれど、ちょっとびっくりした。
そして、決定的なのは、音が面白くないこと。
透明感は高く、歪み感はきわめて少ないのだが、出てくる音が「人が楽器を演奏している」ぬくもり感、手触り感をほとんど持たないのである。
CD5000とは正反対とはいえ、これでは何を聴いても何も感じない。
PHILIPSの、他では聴けない味わいのあとではどうにもショックであり、マルチビットDACは、ALPHAや D.R.I.V.E.で厚化粧したり、8パラとかでないと音楽が鳴らないのか、と落胆したことしきり。
そんなことでまたウェブ上を狂った^^;ように徘徊していると、Technics/Panasonicの1ビット・タイプ、いわゆる「MASH」の搭載されたものの中で、1991年の SL-PS700(39,800円)が、当時の評論家、リスナーの絶賛のみならず、今でもいろいろなサイトで賛嘆されているのに惹かれた。
オク上で、さして高額でなく、リモコンもついている動作品が出ており、何しろ古い機種なので不安はありつつ即落した。
どうだろう、と恐るおそる開封。
古いわりにはずいぶんきれいな機体で、とりあえず動作も良好(上写真上段の黒いCDプレーヤー)。
この機種、よく楽しませていただいている『B級オーディオ・ファン』さんのサイト中に、余すところなく詳述されているので、もはや屋上屋を重ねるに及ばない。
いろいろなところに特記されているのが、トレイの出入りのスムーズさ。
ほとんど無音で、速くもなく遅くもなくトレイが移動する。ディスクを吸い込んだあと、「ガチャッ」というような音は皆無、中のほうで「ゴトッ」と小さな音がする。
TOCのサーチ、シーク音は聞こえるが静か。
これには驚いてしまった。十数万円のCDプレーヤーでもこれほどスムーズではないのではないか、と思う。
最初に再生したエルガーの「愛の挨拶」では、中間部のヴァイオリンの超高音がじつに美しい。
いろいろ聴いてみると、高精細な情報量という方向ではないが、どんな音楽も生きいきと、そして美しく鳴る。
DCD-755IIと比べればなお、聴いていて楽しい。
デザインは、背が高くて個人的には嫌いなタイプであり、ボタンも多いので、気になるだろうと思っていたが、実際に見てみると、以前使った Technicsの機種(たぶん SL-P770だったと思う。SL-PS700の約2年前のリリースか)と格段に違って、パネル左は何もなく、10キーは小さく、意外と格調がある。
驚いたことがもうひとつ、四半世紀近く昔の製品なのに、パナソニックのサイトで取扱説明書がダウンロードできる。
説明書を見ると、このプレーヤーは、搬送時のピックアップ破損防止のために、安全な固定確認法がある。
固定ネジのような方法ではないので、開梱時に誤って壊すこともないし、またこのことはほとんど知られていないだろうし、したがって実行されないまま多く輸送されてきたと思われるが、全く問題は起きないようである。
DCD-755IIには聴くべきものがなく、3台もCDPを置いておけないので、すぐオク出しにせざるをえない。
全く取り柄がなかったかというと、面白いことに、DENON/日本コロムビアの日本人スタッフ中心で制作されたアルバム、1枚しか持っていないのだが、カルミナ四重奏団のシマノフスキーの弦楽四重奏曲(上写真、左)は、例外的にめちゃくちゃよかった。
高精細なヴァイオリンを中心とする音の動きが精緻きわまりないタペストリーを織ってゆくようで、息を呑む。
これは、搭載されている ラムダS.L.C.というデバイスが、元もとDENONが録音現場のために開発したものだそうなので(カタログ)、ちょうど“録ったデッキで再生する”のと近似した現象が起こったためではないかと思う。
が、残念ながらDENONレーベルで日本人スタッフ中心で制作したCDは、この1枚しか持っていない。
この1枚のためだけに DCD-755IIを置いておくということちょっとムリである。
DENONレーベルでも、ペーター・ヴィルモースら欧州スタッフで制作したフルネ指揮のショーソンの交響曲は他レーベル同様、精彩を欠いた。
他には、SL-PS700や CD5000ではトゥッティでヴァイオリンの強奏に歪み感の大きい、ミュンシュ/パリ管のブラームス:交響曲第1番(EMI)も、味気ない再生音ながら、DCD-755IIは最も歪み感が少なかった。
という次第で、Marantz CD5000と Panasonic SL-PS700は、私がこれまで触れてきたCDプレーヤーの中で、外観・操作感・音のいずれにおいても、例外的な存在感を持つ機種であることは間違いない。
─ とりあえず、そんなとこです〜。
思いついたのは、マルチビットDAC最終世代で、かつ ALPHAや D.R.I.V.E.がついていないもの、ということで、DENON DCD-755IIをゲット。
DENONの単品最低価格のCDPは、DCD-700番台で、DCD-735のあと、2000年にDCD-755が登場し、DACはバーブラウンのマルチビット最終世代でサイン・マグニチュード方式の PCM1702になる。
この機種は、『FMファン』の、長岡鉄男氏の「ダイナミックテスト」の最終回(2000年第13号)を飾った。長岡氏の逝去に伴う急な打ち切りだった。
当該号は手許にあるが、DCD-735の繊細ながら低音不足の音に対して、十分低音も量感がある、とまあまあの評価だ。
755は2005年にマイナーチェンジして 755IIとなり(CD-R/RWを再生可とした)、これで DENONのマルチビットDAC時代は終焉を迎える。
DENONの方針ではなく、バーブラウンも1ビット方式に宗旨替えし、マルチビットDAC自体が過去のものとなったからである(と考えられる)。
1年後の2006年に、同じシリーズ型番で DCD-755AEが登場しているようだが、デザインが大きく変わっただけでなく、すでに1ビットDACであり、700番台には搭載してこなかった ALPHAプロセッサーの進化型・AL24を搭載し、ここで同じ型番シリーズではあるが、755は大転換しているのである。
今回、なぜ 755IIにしたのかというと、755の基板にある半固定抵抗が、755IIにはないからである(画像省略)。
だからといって 755IIでデジタル・サーボに変わったわけではないらしい。
ジャンク品を修理・調整する場合はこのVRが重宝するらしいのだが、そういう技倆も意思もない私は、完動品を求めたく、そうであればズレる可能性のあるVRはないにこしたことはない。
さて ─ よさそうな出品品はリモコンがなかったので、単品で出品されているものからひとつ落札、完全な形で入手できた。
で、この写真、Marantz CD5000にはどいてもらっているのだが、上の黒いCDPは!?
じつは、入手できた DCD-755IIは問題のない機体であると思われるが、ディスクを入れてTOCを読む時、とくに読んだあとにもどる時らしいのだが、「シュイ〜ン、キュル、キュルルーン!」とそうとうな動作音を発する。
これは仕様であろうし、いったんTOCを読ませたあと頭出しする時にはさほどでもないので、音楽鑑賞に決定的な妨げではないけれど、ちょっとびっくりした。
そして、決定的なのは、音が面白くないこと。
透明感は高く、歪み感はきわめて少ないのだが、出てくる音が「人が楽器を演奏している」ぬくもり感、手触り感をほとんど持たないのである。
CD5000とは正反対とはいえ、これでは何を聴いても何も感じない。
PHILIPSの、他では聴けない味わいのあとではどうにもショックであり、マルチビットDACは、ALPHAや D.R.I.V.E.で厚化粧したり、8パラとかでないと音楽が鳴らないのか、と落胆したことしきり。
そんなことでまたウェブ上を狂った^^;ように徘徊していると、Technics/Panasonicの1ビット・タイプ、いわゆる「MASH」の搭載されたものの中で、1991年の SL-PS700(39,800円)が、当時の評論家、リスナーの絶賛のみならず、今でもいろいろなサイトで賛嘆されているのに惹かれた。
オク上で、さして高額でなく、リモコンもついている動作品が出ており、何しろ古い機種なので不安はありつつ即落した。
どうだろう、と恐るおそる開封。
古いわりにはずいぶんきれいな機体で、とりあえず動作も良好(上写真上段の黒いCDプレーヤー)。
この機種、よく楽しませていただいている『B級オーディオ・ファン』さんのサイト中に、余すところなく詳述されているので、もはや屋上屋を重ねるに及ばない。
いろいろなところに特記されているのが、トレイの出入りのスムーズさ。
ほとんど無音で、速くもなく遅くもなくトレイが移動する。ディスクを吸い込んだあと、「ガチャッ」というような音は皆無、中のほうで「ゴトッ」と小さな音がする。
TOCのサーチ、シーク音は聞こえるが静か。
これには驚いてしまった。十数万円のCDプレーヤーでもこれほどスムーズではないのではないか、と思う。
最初に再生したエルガーの「愛の挨拶」では、中間部のヴァイオリンの超高音がじつに美しい。
いろいろ聴いてみると、高精細な情報量という方向ではないが、どんな音楽も生きいきと、そして美しく鳴る。
DCD-755IIと比べればなお、聴いていて楽しい。
デザインは、背が高くて個人的には嫌いなタイプであり、ボタンも多いので、気になるだろうと思っていたが、実際に見てみると、以前使った Technicsの機種(たぶん SL-P770だったと思う。SL-PS700の約2年前のリリースか)と格段に違って、パネル左は何もなく、10キーは小さく、意外と格調がある。
驚いたことがもうひとつ、四半世紀近く昔の製品なのに、パナソニックのサイトで取扱説明書がダウンロードできる。
説明書を見ると、このプレーヤーは、搬送時のピックアップ破損防止のために、安全な固定確認法がある。
固定ネジのような方法ではないので、開梱時に誤って壊すこともないし、またこのことはほとんど知られていないだろうし、したがって実行されないまま多く輸送されてきたと思われるが、全く問題は起きないようである。
DCD-755IIには聴くべきものがなく、3台もCDPを置いておけないので、すぐオク出しにせざるをえない。
全く取り柄がなかったかというと、面白いことに、DENON/日本コロムビアの日本人スタッフ中心で制作されたアルバム、1枚しか持っていないのだが、カルミナ四重奏団のシマノフスキーの弦楽四重奏曲(上写真、左)は、例外的にめちゃくちゃよかった。
高精細なヴァイオリンを中心とする音の動きが精緻きわまりないタペストリーを織ってゆくようで、息を呑む。
これは、搭載されている ラムダS.L.C.というデバイスが、元もとDENONが録音現場のために開発したものだそうなので(カタログ)、ちょうど“録ったデッキで再生する”のと近似した現象が起こったためではないかと思う。
が、残念ながらDENONレーベルで日本人スタッフ中心で制作したCDは、この1枚しか持っていない。
この1枚のためだけに DCD-755IIを置いておくということちょっとムリである。
DENONレーベルでも、ペーター・ヴィルモースら欧州スタッフで制作したフルネ指揮のショーソンの交響曲は他レーベル同様、精彩を欠いた。
他には、SL-PS700や CD5000ではトゥッティでヴァイオリンの強奏に歪み感の大きい、ミュンシュ/パリ管のブラームス:交響曲第1番(EMI)も、味気ない再生音ながら、DCD-755IIは最も歪み感が少なかった。
という次第で、Marantz CD5000と Panasonic SL-PS700は、私がこれまで触れてきたCDプレーヤーの中で、外観・操作感・音のいずれにおいても、例外的な存在感を持つ機種であることは間違いない。
─ とりあえず、そんなとこです〜。