いろいろもう書いておりますように、昨秋来、チューニングに躍起になってきたキット・スピーカーを、ポンっと手放したくなり、ちょっと毛色の変わった激安SPに浮気したものの、やはり私の使い方には合わず、ネット上で情報を漁っていたケンウッド LS-K711を導入した。
ハイコンポ‘Kシリーズ’のSPとして、LS-K701の後継機種のはずだが、どういうわけかレシーバーともども、LS-K701のほうも並行して販売中で、旧セットも生産終了扱いにしていない。
LS-K701との大きな違いは、トゥイーター直列のコンデンサーにフィルムコンを使っている(ケミコンにパラっている?)ことくらい。公称能率はLS-K701の83dBに対して85dBと、ちょっと大きい。
両機種とも、価格.comなどのレビューでは好評だが、2ちゃんねるのこ この、397番と562番のカキコが、熱く! LS-K711を、701に対して絶賛していて、気になった。
云く、「サウンドイメージとしてはどことなくDALIのメヌエットに似ているがあそこまで甘くも濃くもなく、そのぶん低域に優れレスポンスがよい。」
DALIのメヌエット!! (゜д゜;) 1万3千円で買えるDALIのメヌエットなんて、美味しすぎる!!
まあちょっと大げさなハナシであるが、値段と外観、それに音を聴いてみると、DALI云々と言ってみたくなる代物ではある。
端子板のネジをはずしても、端子板は引き出せないので、ここに設置されているネットワークは確認できない。
で、音を出してみて、高域がソフト、のひとこと。
あっけないほどソフトだ。こんなに高域がソフトで、かつ‘帯域はまあまあ出ている’スピーカーは、ちょっと聴いたことがない。
ソプラノのフォルテがやわらかく、それゆえ色気もそこはかとなく感じさせる。逆に、ポップスの歌い方での中音域は、女声でもややザラつく感じがつきまとい、‘色気’はそがれる。手許にある例で言うと、尾崎亜美やペギー・リーいったところ。定位はいいのだが、音色に魅力がない。
CDPも、早ばやマランツ CD5003を入れており、これと DAC1794-1.5とで切り換え試聴したけれど、ピアノなどは CD5003のほうが打鍵感が自然に鳴っていい感じもする。
如上、ポップスのヴォーカルが意外に素っ気ないのだが、オケは中域がカサつく面はありながら、音場がうしろに拡がるのは、今までのSPで聴いたことがない要素だ。
低域は、かつてのデンオンのペア6万円のようにボンつくことはないが、ソースによりその直前の感触はある。サイズが小さいことで抑えられているのではないか。
LS-K711の‘素’の感じは、やはり物足りないところと中域がカサつく感じが残るが、ここで「物足りなさ」を除こうと一歩踏み込むやいなや、オーディオ地獄に突っ込むことになる、その、“あちら側”との境界線の‘注連縄’みたいなものを感じる。まあ、お金もないんやったらここまでにしときなはれや、と。
このSPも、やはりテレビくさい音だと言えるだろう。しかし、このような音は、中音域がカサつくのに、不思議に聴き疲れしない。これはある意味当たり前で、私たちはテレビの音声を、けっこう長時間聴き続けている。バラエティやドラマを、3時間くらい続けて見ていることもあろう。その延長であるホームシアターで、2〜4時間の映画を見る人も多いだろう。
これが、それなりのオーディオ・システムで3時間シンフォニーを聴き続けたなら(ブラームスでいうと、4曲の交響曲を続けて聴く)、たいていオカシクなってしまう。
という、聴きやすいが素っ気ない音なので、むしろ聴くソースを選ぶ。それも、オーディオ的に面白い機器とは逆に、音質面より音楽のクオリティ ―“名曲の名演”(もちろん基準は個人的好みだが)しか聴く気持ちを催さなくなる。
‘Kシリーズ’各セットには、ケンウッドはそうとう注力していて、“音質マイスター”(チーフ・エンジニア…)萩原光男氏のネット上での露出もうるさいくらいだ。萩原氏の強調点は、SPよりレシーバーのようで、フルデジタル・プリアンプ部など独自構成を押し出しているが、デザインは従来の日本メーカーの、マンマ以外のなにものでもない。
さて ―