硫化水素自殺報道

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     すでに書いておられるブログもあるが、このところの硫化水素自殺に関するテレビ報道は、異様なまでに‘方法’にのみ視線を収斂させるばかりだ。そして、それぞれの自死の背景には、まるで個々の事情は存在しないかのように、言及しない
     それまでの自殺の報道も、とくに自殺を取り上げた特集などを除けば、個々の事情には可能な限り言及せず、「自殺は悪いことだ」と言うばかりで、諸機関の自殺防止策などを紹介することに終始している観が深かったが、硫化水素自殺報道では、いかにメディアが「内実に触れる報道をしたくない」のかが、如実に、醜悪なまでに如実に浮かび上がってくる。


     日本テレビ《ZERO》で、この方法を動画にしてインターネット上にアップロードしている男性のことを報道し、この男性の行為について、キャスターの村尾信尚さんは「全く理解できない」旨を言っていた。私には、この男性(自殺未遂経験者)の行為は「理解できない」どころか、社会と、自身の人生に対する抑圧された怨恨と憎悪の結晶だと読めた。報道番組が報道番組であろうとするなら、やるべきだったのは、少なくともその深淵の一端に探査灯の光を、少しでいいから当てることではなかったのか。この男性の行為は、私には醜悪極まりないものに見えるが、その背後の精神には、今日の自殺に底流するものが明らかに澱んでいるはずだ。そこには一切目を向けず、「自殺はやめましょう」で締めくくる村尾さんの姿には、どうにも‘自殺’に関わらざるをえなかった者の事情を察しようとする意思は読み取れなかった。

     ちなみに、村尾さんは、以前に別の報道番組のコメンテーターとして、最低賃金の低い地域のそれを上げることについて、企業が存立しにくくなると言って反対していたのを見た記憶がある。NHKのワーキングプア特集番組での氏のコメントに対しても、諸サイトでその‘勝ち組’ぶりが批難されている( ここここ )。眼鏡を取ってさわやか路線で報道番組の顔を目ざす村尾さんの「自殺はやめましょう」というコメントを聞いて、わずかもさわやかな気持ちになれなかった。


     さて、方法にばかり集中する報道だけれど、硫化水素自殺が激増して、一挙にわが国の自死者が増えたわけではない。1998年以来、ずっと公式発表の自死者数は(ですら)3万人を超えているのだ( http://www.t-pec.co.jp/mental/2002-08-4.htm )。そこから目をそむけさせようとしているようにさえ思える硫化水素報道は、何とも不愉快だ。

    テレビはもう見ないでいいよ!

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       一人暮らしの老人の友はたいていはまずテレビのようだ。私もその一人に入ってしまった。もっとも私の場合は、テレビをつけるのは“女の子を見るため”である^^;;。それ以外の用途には、テレビ番組というのは役に立ちそうもない。

       それで、コーヒーを飲みながら、酒を飲みながら、電源を入れるが、そのたびに「違う感覚でやってるなあ」という違和感を通り越した苛立ちを覚えてしまう。

       NHKは、《ETV特集》などに、ほんとうに秀逸な番組もあるけれど、どう見ても薄っぺらい流れが定着している。‘今’人気を博し始めたデザイナーやアーティストを「トップを行く才能」とエラく喧伝する。そりゃ talent がないことはないだろうが、どう見ても違和感あり過ぎ。

       もちろん、‘違和感’の大半は、取り上げられているゲストに対するこっちの嫉妬心に起因することは自覚しているけど、この手の番組に取り上げられる人たちのどれだけが、10年後、20年後に我われの記憶に残っていることだろうか。ま、こっちの嫉妬心から不愉快に感じるだけなのだが、こういう「すっげえ〜」に満ちた‘人’の取り上げ方って、どうもヘン過ぎるな。

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