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フェイクニュース・パブリッシャー

 YouTubeで、ウルトラマンの配信とか‥‥も見ておりまスが、こういう↓ニュース系で「お!」というものにも遭遇する。



 TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』の音声で、アップが今年2月2日とあるので、放送はその直前か。

 昨年(2017年)12月に沖縄で起きた交通事故に際し、アメリカ海兵隊曹長が、日本人を救出したのに、沖縄の新聞(具体的には『琉球新報』と『沖縄タイムス』)はこれを伝えず無視した、ゆえに「救出を報じない沖縄メディアを「報道機関を名乗る資格はない」などと批判した」『琉球新報』の反論記事より)という。

琉球新報サイト


 『産経』当該紙はというと、こう↓である

『産経』、削除記事

 産経支持者(=政権翼賛派)に言わせれば、「それ見い! 『産経』は『朝日』なんかと違ってマジメに訂正しとるぞ!」となる記事である。

 このニュースは、ある意味、もうこういう↓形で拡散済みなのである。一例、だが。

「沖縄左翼死ね」

 きちんと(!)ライブドア・ニュースが引用元としてリンクされている形を取るので、「そうなんだ」と思う手合いが出てきそうだが、当該ライブドア記事は、「提供社の都合により、削除されました」となってしまっている(そりゃそうだろ)。

 もちろん、これらの経緯を押さえた上で、逆方向で『産経』の資質を批判 or 嘲笑するサイトも多い。

 この事故で、この曹長が重傷を負われたことは事実のようで、回復は心から祈りたい。
 問題は、『産経新聞』の記事が、「海兵隊曹長の誠実な行為を顕彰したい」ということだったのか、という点だ。

 『産経新聞』の該ページは、すでに「記事は取材が不十分であり削除します」となっているが、当初の印刷記事は、こちらで確認できる。
 この論調に似た、「アメリカ軍への感謝を、沖縄の(左翼的な)者たちは忘れている」という論は、他の件にまつわる評論家・研究者の意見にも、けっこう見かける。
 「アメリカは、日本を、命を懸けて守ってくれているのだから、常に謝意を持つべきだ」ということなのだが、これは、逆方向に向かうファクターが重要で、「それなのに、米軍や、米軍との地位協定などを批判するのは、日本国家に対する反逆的態度だ」というところが、ポイントだ。

 この視線は、しばしば「沖縄のメディア」に向けられ、「沖縄の政治家、メディア、知識人には反-日本的な者が多く、これらを排除しなければならなない」というメッセージが常に底流している。
 『産経』の“誤報”、というより、重点は「沖縄メディア叩き」であるが、これは『週刊金曜日』の、こちらのページが伝える、櫻井よしこ氏の講演発言:「『朝日新聞』はひどい新聞です。‥‥(中略)‥‥それと同じくらい悪いのが『琉球新報』と『沖縄タイムス』です(拍手)」にも通底する。

 上のリンクにある、『産経』当初記事の末尾に、「米軍がらみの事件・事故が起きればことさら騒ぎ立て、善行に対しては無視を決め込むのが沖縄メディアの常となっている」と明示しているところ、これが「言いたいこと」なのである。

 このコンテクストで見る(以外にないが)と、『産経』が、フェイクを報じたのは、取材が杜撰だったからではなく、このようなフェイク・ニュースをひとつ垂れ流したかったからやった、としか読めない。
 そこで‥‥この交通事故自体を考えると‥‥とりあえず、英語で、この曹長さんの氏名:ヘクター・トルヒーヨ Hector Trujilloと、「help Japanese」などでググると、私的に書いているサイトを除き、ニュース・メデアと考えられるところでは、《NBC Sandiego》のページと、《CBS8》のページが見つかった。

 前者は、「Hector Trujillo pulled over to help someone who’d had an accident, according to his wife, and was hit trying to protect the other person」と記している。
 たしかに、トルヒーヨさんは「事故に巻き込まれていた人を引っ張り出し、他者を助けようとして轢かれた」と書いているが、あくまでも「according to his wife」なのである。

 後者のほうは、「Master Sergeant Hector Trujillo was hit by a car in Japan moments after he came across a car crash on an expressway and pushed another man to safety」と記していて、独自取材による情報とも読めるのだが、上に、「Trujillo’s best friend, Jason Texeira, said it was Trujillo’s selfless nature ‥‥」という行文があり、「トルヒーヨ氏のベスト・フレンド、ジェイソン・テシェイラ氏は、このことはトルヒーヨさんの無私な性格の賜物だと言っている」と言っているので、どこまでが「裏の取れた情報」で、どこからが「妻や友人からの聞き取り」なのか、ニュース記事としては曖昧な感じだ。

 トルヒーヨさんが頭蓋骨骨折(skull fracture)を負っていることは間違いないようで、これについては一刻も早く全快してほしいものだ。
 が、『産経新聞』当初記事は、「意識不明の重体」と明記しており、トルヒーヨさん自ら日本人救出を語ったとはいささか考えにくく、非常にわかりにくい。

 『産経』は、「削除」後記事で、「「日本人を救助した」は確認できませんでした。現在、米海兵隊は「目撃者によると、事故に巻き込まれた人のために何ができるか確認しようとして車にはねられた。実際に救出活動を行ったかは確認できなかった」と説明しています」と言うのみだ。

 少なくとも、トルヒーヨ曹長は、何かできることはないかと自分の車の外に出て見たことは確かなわけで、誠実な人であることは間違いなかろう。
 明らかに、『産経新聞』は、その「顕彰」のためにではなく、沖縄のメディアを「日本会議」的視線で貶めようとして当該記事を仕立てたのである。

 そして結果的に曹長とその家族に対しても礼を失した、「事故を自分たちの政治性のために利用する」がごとき醜悪極まりないものになった
、としか言いようがない。

 この点に関しては、上にリンクした『琉球新報』の反論記事のほうがずっと詳細かつ誠実であり、曹長と家族に対する配慮もうかがえる。一読をお勧めしたい。

 『産経新聞』の削除の言い訳は、曹長の予後などにも一切触れず、「え? ちゃんとフォロー取材しないの?」という感を持つほどドライだ。

 さらに視線を広げて、政権+政権翼賛メディアと沖縄県民との関係という点では、第二次世界大戦末期の、沖縄における住民「集団自決」の問題と二重映しとなる。
 政権が「鬼畜米英」を謳う時には、英米を鬼畜と見て敵視することが求められ、かつ自国の利益とされるならば自殺への決断を促され、その戦争が終わると同時に、「米」は「政府の友」となったのだから、これを大切に遇せよ、というのだ。

 つまり、「政権・政府の言うとおりにせよ」というロジックだ。
 さしあたっては、沖縄がクリティカルな地政学的位置にあるゆえ(近世以降ずっと)、沖縄に対して向けられるのだが、もちろん全国民への「見せしめ」に直結する。

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  • 2018.09.24 Monday
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  • 22:38
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コメント
目くそが鼻くそを笑ったもりが、逆襲に合った構図ですね。反日左翼は大嫌いですが、米国事大保守も困ったものだと思う今日この頃です。
元新潟のUさん、

> 反日左翼は大嫌いですが、
すみません、この「反日左翼」の語の意味が、あまりよくわかりません‥‥。
昭和20年8月に、日本を引っぱって持っていった「亡日右翼」のほうが、何万倍危険なことかと思うのですがねえ。

> 米国事大保守
察するに現・トランプ政権のようなところでしょうか。
またおことばながら‥‥「事大保守」は、わが国のほうが問題で、しかもそれは「保守」ではない、という気がします。

> 逆襲に合った構図ですね。
『琉球新報』側は「逆襲」というのではなく、「言われない不名誉を払った」というだけに見えます。
『産経』も、もう少していねいに取材すれば、事故の詳細や曹長の人柄などから、沖縄での米軍人への視線を変えさせるような記事も書けたんじゃないかなぁ、とも思ったり。
あまりに安易に「日本会議」広報を演じすぎました。

戦時中の、沖縄の悲惨な被害を忘れてはなりませんし、いっぽうで“反日左翼”に「見てみろ、産経はウソばっかり、沖縄のメディアが正しいんじゃ」と言われてもなあ、なのです。
  • へうたむ
  • 2018/03/19 2:07 AM
「反日左翼」とは米国には大いに文句を言うくせに、反日国にはあまり文句を言わない左翼のことです。
米軍に不手際があったのですから大いに文句を言っていいと思いますが、日本の防衛も担ってくれいいる身内です。尖閣諸島に来る中国公船は明らかに尖閣諸島奪取を目論んでおり、中国は反日国であり敵国です。米国に対する抗議の何倍も中国に抗議してしかるべきです。
>「亡日右翼」のほうが、何万倍危険
これはWGIP史観ですね。見事にGHQのマインドコントロールに引っかかっています。

「米国事大保守」とは、ここでは産経新聞社のことです。日本では保守と革新がねじれていますよね。保守と呼ばれている人達が改憲派で、革新と呼ばれている人達が護憲派なんですから。

いずれにしろ、フェイクニュースもいけないし、敢えて報道しないのも報道機関としてはあってはならないことだと思います。
元新潟のUさん、

> 「反日左翼」とは米国には大いに文句を言うくせに、反日国にはあまり文句を言わない左翼のことです。
「大いに文句を言う」ことと「あまり文句を言わない」ことのバランスを、意識的に歪めたレンズで見ると、そうなるかも。

> 尖閣諸島に来る中国公船は明らかに尖閣諸島奪取を目論んでおり、中国は反日国であり敵国です。
領有権の認識を、自国の立場からのみ見るのは国際紛争を起しこそすれ、予防する姿勢ではありません。

「文句」の問題です。
アメリカ軍人・軍属の不祥事は、「実際に」沖縄県民が被害を受け、不安を感じ続けている問題です。
しかも、そのことの解決に際して不公平な「地位協定」が、事の解明を ― 墜落ヘリの検証にしても ― 妨げます。
これに対して、尖閣への中国船侵入やイ・ミョンバクの竹島上陸が、具体的に日本国民に与えた被害を挙げて述べてこそ、「くせに:あまり」比が析出されるというものです。

領有権の問題と、実際に起きている問題との混同を行なうなら、それは意図的に混同せしめているとしか、誰も解さないでしょう。
もっとも、中国の態度・動向が東アジアの危険要素として甚大であることは忘れてはなりませんし、一般に「左翼」扱いされる論者の間でも、それは認識されていないことはないと思います。

>> 「亡日右翼」のほうが、何万倍危険
> これはWGIP史観ですね。見事にGHQのマインドコントロールに引っかかっています。
歴史推移の事実まで「マインドコントロール」というのは、何をかいわんや、です。
上記の、不公平・不自然な日米地位協定などのほうが、よっぽどGHQのマインドコントロール、のみか、ポリティカル・コントロール=占領の継続まで受け切った姿です。
それを「WGIP史観」という、たいへん便利な「あっち側の陰謀論」にしてしまっているのですから、それこそ完々璧々にマインドコントロールの支配下にある考え方以外の何ものでもありません。

しかし不公平な地位協定にしても、アメリカとしては日本の警察の不透明な捜査手法を温存したままでは、「不公平」にしておくことでしか自国軍人・軍属を守れない、と考える。
警察の捜査手法を「改革」したくない日本としては、実質・ポリティカル・コントロール(=オキュペーション)を受け続けておいたほうが都合がよく、他方で、国民には「戦時の反省なんて「WGIP史観」に洗脳されているんだぞ」とやる、じ〜つに便利なマインドコントロールです。

> 「米国事大保守」とは、ここでは産経新聞社のことです。
なるほど。とお考えでしたら、180度、事実と異ならないでしょうか。
「事大」の語の意から見ても、記事に書きましたように、『産経新聞』は、アメリカに対する「事大」など少しもしていません。
あえていえば、「政権事大」、「日本会議事大」です。

> 日本の防衛も担ってくれいいる身内です。
そうなのです。それを、ろくな取材もせず、自らの政治的見解の宣揚に利用しようとした、これは醜悪です。
書いていますように、もっとていねいな取材で、「いい身内」の実を称することもできたはずなのに。

地位協定について、こちら:
https://news.yahoo.co.jp/feature/290
の真ん中辺で、米海兵隊顧問だったという人が、
「(日本の刑事訴訟法によると)基地の外で逮捕されたアメリカ人は、日本の警察署、留置所に送られて、取り調べを(最長で)23日間ずっと受けること(が可能)になっている。弁護士が(取り調べに)立ち会えるといった世界の常識を、なぜ日本は求めないのか」
と言っています。

「いい身内」なのにね。
  • へうたむ
  • 2018/03/20 1:08 AM
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