<< アンプの電源ケーブルのフェライトコア…。 | main | 兵庫県西宮市。大恥の上塗り? >>

落語家のツイート。

 このエッセイを読んでいて遭遇したのだが、こちらの、桂 春蝶なる落語家のツイートが、炎上を呼んでいるらしい。

桂春蝶ツイート

 単純にまとめれば、「すばらしい国・日本における貧困は、絶対的に自己責任なのだから、これについて政府の責任・政策を云々する者は、強欲または売名の意思が強いのだ」ということになろう。

 ふむ。「炎上」に恰好のエサたる言説! であるし、“突っ込み”の声を、また「サヨク!」と嗤う恰好のネタでもあり。
 しかしまあ、ここに綴られたことば ― 書いた人も「ことば」を職業にする人間である ― を、そのままに読み解いてみたい。

 まず「世界中が憧れるこの日本で」と始まる。ふ〜ん、この筆者は、日本は世界中が憧れるすばらしい国だ、と認識している、ということになる。
 そのような「思い」を持つ人は多いだろう。が、その「事実」よりも、ここで押し出されてくるのは、「私は日本、なかんずく国家としての日本を讃美したい」という意思だ。
 ここで、この筆者は、自国の政府を讃美する(中国や北朝鮮でよく映像化される?)「政府讃美者」であるぞ、という主張が臭ってくる。

 次に、「「貧困問題」などを曰う方々は」のテクスト。珍しい「曰」字を使っているのは、まあいい(変換したら出たのだろうか。さっすが噺家さん!)。
 ここで「「貧困問題」などを曰う方々」というのは、想定するに二つ‥‥ひとつは貧困の当事者で、自らの貧困を訴える者。
 もうひとつは、「貧困」を「問題」として論じている人びと。

 この二者のどちらかわかりづらく、それゆえ、曖昧に両者を指して指弾し、「自らの貧困を訴える者も、「貧困問題」から政府・行政批判をする者たちも、みな「強欲」か「売名」の者たちだ」という理解が成り立つ。

 画像で4行めになる、「我が貧困を政府のせいにしている」というテクストは、明らかに「貧困の当事者」、かつそれを「政府が悪いから」と表明している者たち、ということになる。
 実際にこのような「自分の貧困が政治に由来する」と考え、また主張している貧困当事者が、そんなにいるのかどうか、大いに疑問ではある。
 一例だが、貧困などの問題に取り組む田中俊英氏が、G.スピヴァックの「当事者は語れない」という見解を援用しつつ書いている「文京区の貧困当事者は、語ることができるか」の記事がある。

 こういったことは社会学者の調査などが求められよう。
 が、春蝶師匠は、そうした研究者・支援当事者こそ、「「貧困問題」などを曰う」けしからぬ輩である、と言いたそうだ。

 ところが、この文中に、「働けないなら生活保護もある」というテクストが唐突に現われるのには、違和感も並ではないものを感じる。
 「生活保護」は、ある部分、「自己責任」論からはみだすことがらだ。

 いちいちリンクを示すまでもないくらい多くのサイトが指摘するように、わが国の生活保護必要者の捕捉率は、低い。「保護なめんなよ」事件でも見えてきたように、「低くすること」が行政職員に求められる。

 で、春蝶さんが言いたいのは、やはり「生活保護はちゃんとあるんだから、捕捉率が問題だ、とか行政上の運用を議論する輩は強欲 or 売名だ」ということなのだろう。

 問題のテクストをつらつら読んできて、はっきり見えてくるのは、この人は貧困者や貧困問題について何か言いたい、というより、「日本はすばらしい」、「現政府はすばらしい」ということを宣伝したいのだ、ということだ。

 弱者の立場に立つ、という形で政策・行政に批判を加える者こそが、社会・国家を危うくする「サヨク」なのだ、という、大勢の、意味をいっさい思考・定義しない「サヨク」なる語も、こうした、政府讃美のコンテクストで用いられる単語だ。
 それは措いておいても、こういう“政権翼賛落語家”が出てくるなんざ、面白いのか面白くないのか…。

 お父さんの先代春蝶師匠、頬のこけた風貌が、庶民的でしたけどねえ。

スポンサーサイト

  • 2018.07.23 Monday
  • -
  • 23:52
  • -
  • -
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

コメント
貧困を自己責任だけにするのは暴論ですね。今の日本は低賃金の非正規雇用が多過ぎます。ちょっと計算すれば解るはずです。
生活保護の不正受給と、なかなか受け付けてもらえないというのは別問題としてあるように思います。
元新潟のUさん、

> ちょっと計算すれば解るはずです。
そうなんですが、「自己責任論」を採る人びとは、非正規による貧困も「自分の怠慢のせいだ」と見るんですね。

捕捉と不正受給確認の問題は、“お役所の姿勢”が顕著に反映、ということは政治の姿勢が出てくる部分だと思います。

記事に書きましたように、この噺家さん、自己責任論より、「この国=政府がいかにスバラシイか」を言いたいようです。
  • へうたむ
  • 2018/02/25 3:23 PM
最近青年会議所が吉本興業と組んで改憲先導している事実とか出てきましたし、所詮芸人ですから発注元にキャラに合わせて演技するのだろうなあという視点も大切かと。そういう意味で河原乞食階級なんだなと。
  • インコ
  • 2018/03/06 9:20 AM
インコさん、

日本青年会議所と吉本興業のコラボ、それから、青年会議所の「宇予くん」キャラなど、あちらのほうも見逃せない(!)動きです。

> 所詮芸人ですから発注元にキャラに合わせて演技するのだろうなあという視点も大切かと。
ビジネスというのは、芸能に限らずそういうものですから、そうだ、ということでしょうね。

いただいたおことばの、ことば尻を取ることになって恐縮なのですが、「所詮」と言ってしまいますと、私たちもだいたい全て、「所詮」何かの仕事の従業者であるわけですから、「所詮」「発注元に」「キャラを合わせて」生きている、という次第です。

「河原乞食階級」というのも、「河原乞食」であるからこそいわば社会体制の「外」にあって、必要に応じて「キャラを演じ」つつ、時に体制内エスタブリッシュメントのできない「外からの批判・揶揄」ができる、というファクターを持っているはずです。

「芸能」が社会に組み込まれてしまうと、「河原乞食」の「乞食 begger」キャラだけが、ちょうど一般社会の「社畜」キャラのように、権力追従になってしまうんでしょう。
  • へうたむ
  • 2018/03/06 3:36 PM
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック
calendar
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< July 2018 >>
PR
selected entries
categories
archives
recent comment
recent trackback
recommend
ライヴ・イン・コンサート1991
ライヴ・イン・コンサート1991 (JUGEMレビュー »)
内田光子,モーツァルト
神韻縹渺。
recommend
Symphony 7
Symphony 7 (JUGEMレビュー »)
Bruckner,Berlin Philharmonic Orchestra,Wand
やっぱりこれは、音楽の世界遺産!
recommend
チャイコフスキー : 交響曲第6番ロ短調<悲愴>
チャイコフスキー : 交響曲第6番ロ短調<悲愴> (JUGEMレビュー »)
ベルリン放送交響楽団,チャイコフスキー,フリッチャイ(フェレンツ)
※クラシックで1枚、といったらコレ!! 新しい国内盤が出ています。
recommend
Symphony No. 8
Symphony No. 8 (JUGEMレビュー »)
D. Shostakovich
ムラヴィンスキー/レニングラードの決定盤!!
求めやすい alto盤が、Amazon.co.jpにも入りましたので、入替えておきます^^。
recommend
はてしない物語
はてしない物語 (JUGEMレビュー »)
ミヒャエル・エンデ
“虚偽”の時代への警鐘!
recommend
風邪の効用 (ちくま文庫)
風邪の効用 (ちくま文庫) (JUGEMレビュー »)
野口 晴哉
やっぱりこれは入れておかないと…。
recommend
野生の哲学―野口晴哉の生命宇宙 (ちくま文庫 な 38-1)
野生の哲学―野口晴哉の生命宇宙 (ちくま文庫 な 38-1) (JUGEMレビュー »)
永沢 哲
整体の創始者・野口晴哉の核心に初めて思想研究として迫った力作!!
recommend
「ひきこもり」だった僕から
「ひきこもり」だった僕から (JUGEMレビュー »)
上山 和樹
‘本館’に所感をアップしてます(^^)。
recommend
言葉と無意識 (講談社現代新書)
言葉と無意識 (講談社現代新書) (JUGEMレビュー »)
丸山 圭三郎
小冊子ながら、限りない示唆に満ちた名著
recommend
シンクロニシティ (サンマーク文庫―エヴァ・シリーズ)
シンクロニシティ (サンマーク文庫―エヴァ・シリーズ) (JUGEMレビュー »)
F.デヴィッド ピート
‘シンクロニシティ’を可能なかぎり、‘トンデモ’から離れて説いた良心的な一書。
recommend
links
profile
search this site.
others
mobile
qrcode
powered
無料ブログ作成サービス JUGEM