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天皇退位論、とか雑感。

 今回は画像なし。カテゴリーも「愚痴」です。

 いつものとおり、帰宅時には始まっているけれど、TBSラジオ《荻上チキの Session-22》を聞いた。

 今夜(4日)の特集は、天皇の退位日程等の決定に関する議論。
 ゲストの放送大教授・原 武史氏が、平成天皇の「祈り」=宮中祭祀と全国行幸への熱意は、単に「よい人」というイメージだけでなく、すでに明治以降、戦前の天皇イメージ構築の中核だった部分を、国民に定着させてきており、それは新たな「国体」となってきている、という、氏の最近の天皇観でもある見解を述べていた(原氏の見解については、こちら、など)。

 今上天皇・皇后の、こうした活動は、庶民一般はもちろん、リベラル派の人びとにも共感を以て迎えられてきているが、その歴史的意味は、憲法のあり方とともに、十分に考察されねばならない、と聞き取れた。

 原氏は、NHKが天皇退位問題を、異様なまでの長時間と、国民間にさも異論が存しないかのような形で報じる番組を組んだことを取り上げ、その番組中、インタビューを受けた女子高校生が「天皇のことを私みたいな者が語るのは畏れ多くて…」云々と答えていたことを挙げて、「驚いた」と言っていたのには、むしろ私のほうが驚いた。

 氏のような専門家ならば、天皇が、我が国において、「上から押しつけられた」権威という次元とは異なる、「人びとの敬愛・畏敬の対象たる王」という「神話性」を、常に負わされる存在であることは当然理解しているはずだからだ。

 とはいえ厄介なのは、この「神話性」は、「だから、我われ日本人には、上から押しつけられた《天皇》ではなく、自発的に敬愛する《天皇》があるのだ」という論に、短絡する要素があることだ。
 「自発的に敬愛する」のは、自発的に敬愛するように、公教育と報道と‘世間’が、押しつけてきたからにほかならない。
 と同時に、これも軽々に無視できないのは、そのように「自発的に押しつけられる」=言い換えれば、まさに「内発的に、自然に天皇を敬愛する」要素も十分に、国民にあったということである。

 すぐに「原氏のように女子高生の言に驚いたのは‘鈍感’ではないか」とTBSラジオにメールしてしまったが、原氏が鈍感だと非難するようなことは本意ではない。

 今上天皇の「人間として」の被災地巡幸などに共感と敬愛を覚える、きわめて普通の人間的感情が、明治期から太平洋戦争へと推移した時代の「天皇」=「国体」に、ある意味直結していることには、十二分の注意を払わなくてはならないのと同時に、そのような感情を一概に否定することが困難な理由も、じっくり考えなければならないだろう。

 その際に、最も避くべからざる重要事項は、日本は昭和20年8月に、主権を失った国だ、ということだ。
 今流行の「教育勅語」を「拳拳服膺」し抜いた挙句のはてに主権を失ったのである。

 それでも、民は、「王の行幸(みゆき)」を待ち、仰ぎ、喜ぶ。
 ジョン・ブアマン監督の《エクスカリバー》では、アーサー王の疾駆していったあとには、枯れた草も再び蘇生し、花ひらく演出があるが、それが「王の徳」なのだ。

 《Session-22》では、原氏が、そういった国民の中に澎湃と流れ始めた親和的かつ神話的天皇観に乗っかるように、あの内田 樹氏が、天皇賛美ともいえる言説をなしている、と言っていた。
 ネット上には、『月刊日本』掲載の、内田氏の「私が天皇主義者になったわけ」の一部として読むことができる。

 この発言に、原氏は大きな疑問を呈していた。
 上にリンクした原説と読み比べてみるとよろしいかと思うが、この内田氏の、調子がよすぎる今上天皇賛美には、まったくこの男の知性のありようを知らしむるものがある。

 いっぽうでこの男、あの SEALDsに熱い賛意を表明したりもしている。
 「僕たちはいま、2015年の夏に、戦争法案の参院審議のさなかにあって、日本の平和主義と立憲デモクラシーの「死」と「再生」の劇に立ち合っているということです」などと、イケシャアシャアとのたまっている

 もちろん、このような氏のスタンスであるからこそ、一般には受けがよく、本もよく売れるのである。
 そのスタンスは、私たちの内面に、意識されないまま蟠っている、「戦前からつながっている要素の心地よさ」と「結果がよかったからというだけで受け容れ、固持する憲法と立憲主義」という、「私たちのいちばん脆弱なところ」と、実にうまくシンクロするのだ。

 こうなんだから、女子大生の「無純」と「精心」に慨嘆するくらいしか、言いようもないのだろう。あ〜あ。

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  • 2018.07.23 Monday
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  • 03:01
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コメント
残念ながら「原氏の見解」はアクセスできませんでした。
この記事結局何をおっしゃりたいのか私のようなぼんくらにはよく理解できませんでしたが、へうたむさんは天皇廃止論者でしょうか?
「驚いた」というとですね、みっちは子供の頃、祖母(明治21年生まれ)に、その「天皇観」を聞いたときに、驚きました。
祖母はもちろん、とうに亡くなっておりますが、生粋の大阪人で、高等教育は受けておらず、思想的背景など全くなく、極楽往生を信じており、一生着物で過ごし、バスの座席にも正座して座るという人でありました。
みっちは、子供心に、戦前の人はみな天皇を尊崇・敬愛しているのかと、思っていました。
「そんなことは全くなかった」のです。
年賀の挨拶や、地方行幸などのニュースを見ても、別に感激している様子はありませんでした。
そういう意味では、くだんの女子高生と、ちょっと違います。ただ、この女子高生が、本当に自分の思いを口にしているかどうか、疑問はありますけどね。どこかで小耳に挟んだフレーズを繰り返しているだけかもしれないし。(笑)

まあ、それが本音だとすると、これはどう考えたら良いのでしょうか。戦前と現代の教育の差?、あるいはメディアの影響力の違い?明治21年生まれだと、青春期がいわゆる「大正デモクラシー」の時期になるので、この辺りも作用しているのですかね。
元新潟のUさん、

> よく理解できませんでした
遠慮なくスルーしてください。

> へうたむさんは天皇廃止論者でしょうか?
どちらかと聞かれれば、心情的に、天皇及び皇室存続派です。
ですが、戦前回帰的潮流にはいくら注意してもしすぎではないと考えます。
  • へうたむ
  • 2017/12/06 2:11 AM
みっちさん、

> 戦前の人はみな天皇を尊崇・敬愛しているのかと、思っていました。
> 「そんなことは全くなかった」のです。
ふむ〜、記事にリンクした原氏の言と相俟って興味深いですね。

やはり、天皇イメージの神聖化と、国民へのその‘押しつけ’は、昭和期に入って顕著だったのかもしれません。

> この女子高生が、本当に自分の思いを口にしているかどうか、疑問はありますけどね。
「小耳に挟んだフレーズ」だったとしても、それを繰り返した心理があったはずです。

> 明治21年生まれだと、青春期がいわゆる「大正デモクラシー」の時期になるので、
そうかもしれません。

> 戦前と現代の教育の差?
‘差’であるはずのものが、実は同質のものを再生産しているのでは、ということを考えさせられたので、書いた記事です。
  • へうたむ
  • 2017/12/06 2:31 AM
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