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リパッティ到着。

 リパッティ! 来ましたぁ〜。

リパッティとペルルミュテール

 ショパンのワルツ集は、ARTリマスター盤、英EMI“Great Rcordings of The Century”の、エンジェル・マーク・ヴァージョンとニッパー犬マーク・ヴァージョン(後者のほうがレア)とある中、ニッパー犬のほう。Amazon中古でたいへんきれいなディスクが、送料込み650円。

 “Great Pianists of The 20th Century”(PHILIPSなのだが、PHILIPSのロゴはほとんど見せない)のほう、これは、かのシューマンとグリーグの協奏曲が収録される上、バッハのパルティータ第1番と『主よ、人の望みの喜びを』、モーツァルトのイ短調のソナタなどが入って、お買い得の2枚組である。
 国内の Amazonとオクでは2,000円近い出品しかなく、海外盤でよいので、英Amazonのいちばん安い出品をポチリ。

 このシリーズ、海外盤は厚紙のスリーブに直接ディスクを滑り込ませるタイプなので、海外のユーザーの場合、たいていの場合そこそこ擦りキズをつけているかと思われたけれど、聴ければいいか、とポチリ。送料込み880円也、であった。

 思ったとおり信号面全体に擦過感と、皮脂にカビのついた点などが見えたが、水とアルコール(無水アルコールだけでは、カビが取れない)を染ませたティッシュで軽く拭いてプレーヤーに。再生はOK。

 次いで、「今回は断念」と書いていた、ペルルミュテールの、ワルツ集もオクでポチ。
 1962年録音の、コンサートホール録音の DENON盤である。

 リパッティ。と〜にもかくにも生まれて初めて聴く。
 1950年録音のショパン:ワルツ集は、巷に言われる‘歴史的名演だが、どうにも録音が古い’ということがまったく当てはまらないほど、厚みと重みのある、存在感のきわめて大きな音質で収録されていて、いったんCDプレーヤーのプレイボタンを押したら、止められなくなってしまうような、とめどなく音楽が溢れ出してくる演奏である。
 聴いてよかった。

 PHILIPSの“Great Pianists”(音源はもちろん EMIで、ライセンス・リリースであり、EMIのロゴもあり)から、2枚めの頭に、ぜいたくにシューマンとグリーグのコンチェルトが続いて収録されているのを、通して聴いてしまった。
 シューマンは、“例の”の修飾つきでも言われる(?)、『ウルトラセブン』最終回のBGM。ほんとうにこの音源だったらしい。

 そういうことも忘れて聞き手を没入させる異様な集中力の凝集した演奏だ。
 グリーグの強打鍵はすさまじいもので、「いつもこんな弾き方をしていたら、だれでも身体を壊すんじゃないか」とも思った。

 2曲のコンチェルトの ARTリマスター盤は、それぞれショパンやモーツァルトとのカップリングのようであり(実際にはシューマンとグリーグをカップリングしたART盤も、国内盤で出ていた)、2曲をカップリングした英Dutton盤のマスタリングは評判がいまいち、そこで、元レーベルとは一味違うマスタリングだといわれる“Great Pianists”(『New York Times』のサイト内らしきところにレビューあり)が、リパッティの名演が2枚に収まっている上に独自リマスターも期待できる、ということで選んだのだが‥‥。

 全体に、EMIの ARTリマスターのほうは、SP原盤の針音などは適度にフィルタリングしつつも、広帯域・高情報量を志向していて、明瞭な音質である。
 “Great Pianists”のリマスターを全て監修した Alfred Kaineという人によるほうは、EMIの ARTより高域をロールダウンしたように聞こえる。SP原盤の場合の針音はさらに抑制が強い。
 これだと、快適さを求めすぎてリアリティが減殺され、とくに日本のオーディオ・マニアには評価が低くなりそうな音なのだけれど、これはこれで、分厚い中域の存在感がたっぷりとあって、‘いかにもピアノ’という音がする。

 厚紙スリーブが直接接触するのが気になれば、ディスクユニオンなどで‘前方後円墳’型の内袋を買って入れるといいが、厚紙ウォレット・タイプのものなどは、「重力方向に信号面が向かないように」して収納するように気をつけているので、このままでもいいかも。
 “Great Pianists”の全貌の確認には、こちらが至便!

 それにしてもこの3枚のディスクに収められている‘音楽’の、どれほど豊かなことか。

 そして、「ステレオでは、繊細な表情と洗練されたフレージングの美しさで語りかけるように弾くペルルミュテール(Con)のワルツがすばらしい味わいをみせた演奏です」という小林利之氏の文言が頭を離れず、けっきょくポチってしまったペルルミュテール、コンサートホール録音のショパン:ワルツ集。

 これもまた、リパッティの緊張とはまったく違う方向ながら、ひそやかな抒情を湛えた、香り高い演奏が続く。

 コンサートホール・レーベルには、前奏曲集、ワルツ集、それに『幻想曲』、『舟歌』などを入れたショパン名曲集の、どうやら3アルバムがあるらしい。
 コンサートホールの国内盤CD、つまり日本メール・オーダーのリリースしたCDは、前奏曲とワルツを1枚に収めたものと、『幻想曲』などの名曲集の1枚になっていたようであり、いっぽう日本コロムビア=DENON盤では、前奏曲とワルツをそれぞれ1枚ずつ出し、名曲集はこの2枚のフィルアップとして分散させたようである。

 かつて日本メール・オーダー盤の名曲集を中古で買って持っていた記憶があり、強音部分で音割れが耳についた。
 この DENON盤は、広帯域を目ざしすぎてテープヒスがやや出てくるけれど、ピアノの音は透明で美しく、こちらがいいことは間違いない。

 CDでは、日本メール・オーダー盤と日本コロムビア盤のほかには、前奏曲とワルツ集を収録し、その他のショパンは入れず、2枚めにベートーヴェンの『皇帝』を収めた Scribendum盤がある。
 『皇帝』はモノ録音で、「ペルルミュテールの芸風で『皇帝』はちょっとな〜」と思って選ばなかったのだが、これがなかなかの名演らしく、指揮者のヴェヒティンクという人も気合の入った演奏をしているとか。

 アリス・沙良・オットのワルツ集も、いい演奏なのだが、曲を聴き進むごとに感銘が深まってゆくかというと、残念ながらむしろやや「飽きてくる」ところがある。
 彼女の、このアルバムの自己紹介的な映像(DVD付属ヴァージョンのCDは、確かそのDVDに収録?)は YouTubeでも一部が見られ、海外盤のデジパック・ジャケット見開き部分にある、港のクレーンのレールの間で演奏するという演出の意味が語られていたようだ。
 港は、実際にポーランドのグダニスクの港らしく、祖国を離れて二度と戻れなかったショパン、という、やや政治性も帯びたメッセージを動画から感じ取れるのだけれど、その鋭角的な感覚は、演奏にはまるで現われてこないのが不満といえば不満だ。

 ペルルミュテールは、その意味では政治性などかけらもない芸風なのだが、彼は現・リトアニアの、カウナスが生まれ故郷だそうだ。
 カウナスは、戦時中、ここの日本領事館で、“あの”杉原千畝が、ユダヤ人のために必死でビザを発給し続けた地である。

 ショパンのほうはと言えば、父はフランスからポーランドに移った‘移民’であり、ショパン自身はポーランドへの愛国心が強固でありながら、フランスに移り住んで二度と故国には帰らなかった、という人だ。

 西欧音楽の作曲と演奏の白眉は、西から東、東から西へのとどまることのない、多くの場合本人たちには不幸な「移民」の波の中に生まれてきている、ということなのか‥‥。

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  • 2017.11.23 Thursday
  • -
  • 04:13
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コメント
“Great Pianists of The 20th Century”とART盤にそんな音の違いがあるとは、今まで意識したことがありませんでした。リパッティでは、グリーグ+シューマンを、東芝LP、ダットン、オーパス蔵の三種類架蔵していますが音はかなりちがいますね。目下一番聞きやすいのはLPです。ただ、この人でなければ、というほどの思い入れはそれほどありません。私がピアニストを選ぶ基準はベートーヴェンとドビュッシーなので…
もし早世しなければ、彼はベートーヴェンのピアノ・ソナタに着手していたはずで、そうなれば私にとってもかけがえのない存在になったかもしれません。残念です。
  • yositaka
  • 2017/02/10 8:52 AM
yositakaさん、

この2種のマスタリングの音の違いは僅少ですが、“Great Pianists of The 20th Century”は、シリーズとして一人のプロデューサーとエンジニアが編集と音質に責任を持っているゆえ、それなりのポリシーはあるようです。

> グリーグ+シューマンを、東芝LP、ダットン、オーパス蔵の三種類架蔵して
> いますが音はかなりちがいますね。目下一番聞きやすいのはLPです。
なるほど。
私の個人的経験では、東芝のLPにはほんとうに落胆してきたのですが、これは再生装置との相性が大きそうです。
ゆったりとした音を作るカートリッジやフォノ・アンプをお使いの方であれば、よい面が引き出せるのでしょう。

オーパス蔵は、いちど聴いてみたいのですが、SP音源の場合の針音の凄まじさをいうレビューが多く、敬して遠ざけております^^;;。

リパッティが長生きをしてベートーヴェン‥‥というのはファン、いや音楽好きなら想像してしまいますね。

P.S.
貴ブログに長駄文コメントを失礼しました。暖かいお返事に涙‥‥です m(^_^;)m。
  • へうたむ
  • 2017/02/10 2:30 PM
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