今度の参院選の「争点」は、一見「ない」ように見える。
‘アベ政治を許さない’サイドの人たちの勢いはそうとうなもののようだが、大衆は現・自民党政権の、いわゆる「アベノミクス」にも、防衛・改憲などへの動向にもあまり不満も異議も感じていないみたいなので、このまま与党大勝の方向に行くのかも。
が、多くの有権者の暮らしに関わってきそうなところで、あれれ? な問題が出来している。
・年金の損失発表延期
GPIFによる年金の運用について、2015年度の運用成績発表が、例年の7月第2〜3週より半月ていど延期して、参院選後になるのが確実な7月29日となったという件。
発表内容は、5兆円近い損失らしいというが、この損失への非難に対して、《ビジネスジャーナル》サイト上の「国の年金運用で5兆円損失、「失敗だ!」批判は間違いである…年金危機説のウソ」という記 事(大江英樹氏執筆)が反論している。
いつもいろいろなことを学ばせてもらっているこちらのブログのこの記事に、ちょっとコメントで茶々を入れさせてもらったところ、リコメで、元GPIFメンバーだった小幡 績氏のブログ記事に同意する旨の示教をいただいた。
小幡氏は、「損失自体は構わない。‥‥問題は、結果の公表を遅らせていることだ。あるいは遅らせていると思われていることだ」と言う。
今回の問題が、「損失」よりも「発表延期」のほうにあるということは、私は知らなかった。
加えて、上記ブログのリコメにて、《東洋経済オンライン》サイト上の「巨大機関投資家GPIFは「危機的状況」にある」という寄 稿(近藤俊介氏執筆)が参考になる、と教えていただいた。
こちらでは、単なる損失が問題なのではなく、現在、株価下落と資産売却がパラレルに進行せざるをえない状況にあり、それは、2014年10月の「基本ポートフォリオの変更」における運用資産内容比率の変更に大きな問題があった、という指摘をしている。

画像は、GPIFのPDF文書「年金積立金管理運用独立行政法人の中期計画(基本ポートフォリオ)の変更」(URL:http://www.gpif.go.jp/operation/foundation/pdf/midterm_plan_change.pdf )から。
いちばん先にあげた大江氏の論考には、こういうことはツユほども入っていない。
この辺が、政権の年金運用に関する参考資料として用いられるべきだろう。
イギリスの国民投票の愚挙を笑う日本の有権者が、参院選のあとの年金運用成績発表を見て、「しまった!」と思わないことが肝要、だろうか。
・自民党憲法草案の「家族条項」
5日の《荻上チキの Session-22》(TBSラジオ)には自民党・平 将明議員が出席して、自民党の見解を述べていた。
この時、終りのほうで、自民党の改憲草案に触れて、この時点から電話で参加した木村草太氏の質問に答えていた中、同草案の「家族条項」について、平氏はかなりはっきりと「こういうことまで権力に言われたくはないな、と思う」、「自民党の会議では、この条項には反対しました」と言っていた。
番組サイトのこちらで、録音の配信がまだ聴けるだろうか‥‥1時間8分のうち、終わりのほう6分間くらいの部分である。

自民党の改正憲法草案には、いわゆる「日本会議」が目ざしている、あるいは基底としているようなイデオロギーが、底流として流れていると評される。
番組では、平氏は「草案ですから」と、ここにいろいろ改訂を加えてよいものにしてゆくつもりだという言い方に終始していた。
が、「憲法」というのは、部分部分の差し替えが自由にできるというものとは違い、全体としての、「この国家はこうあるべきだ」という「理念」が示されるものだ。
そこに、こうした条文を盛り込むことは、明らかに「そういう国家を作ろう」という意思の表われだ。
現“安倍自民党”の目ざすところは、事務的に「集団的自衛権を認めさせたい」というようなものとは質が違い、こういう「復古イデオロギー的改憲」なのであって、それは自民党内の若手政治家にすら疑問視されるようなものなのだ。
この点では、今回の参院選は、自民党が敗北したほうが、むしろ党内の良心的政治家が台頭できる契機にもなろう。
集団的自衛権の確立はすでになされている上、このまま「安倍自民党」の勝利をあと押しするなら、「安全な保守」の域を越えて「日本会議的なるもの」に、全面的にわが国を委ねることになってしまうことは間違いない。
そして ― 今回はあくまでも「参議院選挙」であって、政権選択選挙ではないのである。
‘アベ政治を許さない’サイドの人たちの勢いはそうとうなもののようだが、大衆は現・自民党政権の、いわゆる「アベノミクス」にも、防衛・改憲などへの動向にもあまり不満も異議も感じていないみたいなので、このまま与党大勝の方向に行くのかも。
が、多くの有権者の暮らしに関わってきそうなところで、あれれ? な問題が出来している。
・年金の損失発表延期
GPIFによる年金の運用について、2015年度の運用成績発表が、例年の7月第2〜3週より半月ていど延期して、参院選後になるのが確実な7月29日となったという件。
発表内容は、5兆円近い損失らしいというが、この損失への非難に対して、《ビジネスジャーナル》サイト上の「国の年金運用で5兆円損失、「失敗だ!」批判は間違いである…年金危機説のウソ」という記 事(大江英樹氏執筆)が反論している。
いつもいろいろなことを学ばせてもらっているこちらのブログのこの記事に、ちょっとコメントで茶々を入れさせてもらったところ、リコメで、元GPIFメンバーだった小幡 績氏のブログ記事に同意する旨の示教をいただいた。
小幡氏は、「損失自体は構わない。‥‥問題は、結果の公表を遅らせていることだ。あるいは遅らせていると思われていることだ」と言う。
今回の問題が、「損失」よりも「発表延期」のほうにあるということは、私は知らなかった。
加えて、上記ブログのリコメにて、《東洋経済オンライン》サイト上の「巨大機関投資家GPIFは「危機的状況」にある」という寄 稿(近藤俊介氏執筆)が参考になる、と教えていただいた。
こちらでは、単なる損失が問題なのではなく、現在、株価下落と資産売却がパラレルに進行せざるをえない状況にあり、それは、2014年10月の「基本ポートフォリオの変更」における運用資産内容比率の変更に大きな問題があった、という指摘をしている。

画像は、GPIFのPDF文書「年金積立金管理運用独立行政法人の中期計画(基本ポートフォリオ)の変更」(URL:http://www.gpif.go.jp/operation/foundation/pdf/midterm_plan_change.pdf )から。
いちばん先にあげた大江氏の論考には、こういうことはツユほども入っていない。
この辺が、政権の年金運用に関する参考資料として用いられるべきだろう。
イギリスの国民投票の愚挙を笑う日本の有権者が、参院選のあとの年金運用成績発表を見て、「しまった!」と思わないことが肝要、だろうか。
・自民党憲法草案の「家族条項」
5日の《荻上チキの Session-22》(TBSラジオ)には自民党・平 将明議員が出席して、自民党の見解を述べていた。
この時、終りのほうで、自民党の改憲草案に触れて、この時点から電話で参加した木村草太氏の質問に答えていた中、同草案の「家族条項」について、平氏はかなりはっきりと「こういうことまで権力に言われたくはないな、と思う」、「自民党の会議では、この条項には反対しました」と言っていた。
番組サイトのこちらで、録音の配信がまだ聴けるだろうか‥‥1時間8分のうち、終わりのほう6分間くらいの部分である。

自民党の改正憲法草案には、いわゆる「日本会議」が目ざしている、あるいは基底としているようなイデオロギーが、底流として流れていると評される。
番組では、平氏は「草案ですから」と、ここにいろいろ改訂を加えてよいものにしてゆくつもりだという言い方に終始していた。
が、「憲法」というのは、部分部分の差し替えが自由にできるというものとは違い、全体としての、「この国家はこうあるべきだ」という「理念」が示されるものだ。
そこに、こうした条文を盛り込むことは、明らかに「そういう国家を作ろう」という意思の表われだ。
現“安倍自民党”の目ざすところは、事務的に「集団的自衛権を認めさせたい」というようなものとは質が違い、こういう「復古イデオロギー的改憲」なのであって、それは自民党内の若手政治家にすら疑問視されるようなものなのだ。
この点では、今回の参院選は、自民党が敗北したほうが、むしろ党内の良心的政治家が台頭できる契機にもなろう。
集団的自衛権の確立はすでになされている上、このまま「安倍自民党」の勝利をあと押しするなら、「安全な保守」の域を越えて「日本会議的なるもの」に、全面的にわが国を委ねることになってしまうことは間違いない。
そして ― 今回はあくまでも「参議院選挙」であって、政権選択選挙ではないのである。