
著者はジャーナリストから経済学者になった方で、私はこの方面には全く知識がないが、私自身が「会社社会」に入ることができなかったコンプレックスから、たぶんこの本を買ったのだろう。わが国の「会社主義社会」とその中での企業のあり方を批判した一書で(というくらいしか私には紹介の能力がない)、戦前の財閥から、その解体と解体の意義、それ以後のその空洞化…等々を述べていて、「会社に富が集中」(150頁見出し)する日本社会の病理を指摘する。
昨今のグローバル化以前に、日本の企業社会は国際的な資本主義のルールに則らない部分を含み持ちつつ繁栄してきたことはよく言われるものの、日々のニュース番組では株価の上下や企業個々の問題にばかりしか視点が届かない。
奥村氏のこの本は、そうとう以前に日本の企業社会の問題を指摘しているが、それらについて、何の改善もないまま、むしろますます会社に富が集中する方向に突き進んだあげく、“未曽有の金融危機”に至っている。