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ちょっと昔の新書…

奥村 宏『会社本位主義は崩れるか』岩波新書、1992年 続いて、本の処理ばなし。本を処分するためにパラパラと眺める作業を続けて、古い新書群が、最近のものに比べて水準が高いという感を強くしているが、奥村 宏『会社本位主義は崩れるか』(岩波新書、1992年)というのが、出てきた。あとのほうに栞が挟んであったので、そこまでは読んだらしい。

 著者はジャーナリストから経済学者になった方で、私はこの方面には全く知識がないが、私自身が「会社社会」に入ることができなかったコンプレックスから、たぶんこの本を買ったのだろう。わが国の「会社主義社会」とその中での企業のあり方を批判した一書で(というくらいしか私には紹介の能力がない)、戦前の財閥から、その解体と解体の意義、それ以後のその空洞化…等々を述べていて、「会社に富が集中」(150頁見出し)する日本社会の病理を指摘する。

 昨今のグローバル化以前に、日本の企業社会は国際的な資本主義のルールに則らない部分を含み持ちつつ繁栄してきたことはよく言われるものの、日々のニュース番組では株価の上下や企業個々の問題にばかりしか視点が届かない。
 奥村氏のこの本は、そうとう以前に日本の企業社会の問題を指摘しているが、それらについて、何の改善もないまま、むしろますます会社に富が集中する方向に突き進んだあげく、“未曽有の金融危機”に至っている。
 わが国の、一見大繁栄、実状超貧困、の惨状については、暉峻淑子(てるおか・いつこ)氏が、バブル崩壊以前には『豊かさとは何か』(岩波新書、1989年)、バブル崩壊後『豊かさの条件』(同、2003年。お、私のレヴューがトップに^^;/。)を上梓していて、同感しながら読んだものだが、世の中は一向によくならないばかりか、積極的に悪い方向を選択していった ― ‘よい’‘悪い’は主観的なものだから、大多数の人々にとっては「よかった」のだろう。そして、毎年自殺者3万人の社会が実現した。

 こういう本を本棚から再発見するのは、(みじめな思いの中で、せめてもの)整理の楽しみでもあるが、こういった書物を見ていると、如何に良書が社会に影響を与えないか、ということを痛感する。
 こちらの記事(下のほう)にあるように、諸外国では広告代理店は、「1業種1社」からしか受注できないが、日本ではそうではないので、1〜2社の超巨大広告代理店がメディアに大きな影響を与えすぎている、ということなども、放置されっぱなしだ。
 こうした国では、現今の「未曽有の金融危機」も、天災であるがごとくに大衆に思わせようという意識操作が、徹底する。
 よい書物なんて、なんて無力なんだろう。

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  • 2017.06.26 Monday
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  • 11:34
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コメント
だから個人の意識が大切なんですよ。
  • mo
  • 2009/03/28 9:06 PM
moさん、コメントどうも^^。ケーブルの記事に来てくださった方ですね。

>だから個人の意識が大切なんですよ。
そのとおりです。‥‥もっとも、現今の社会も、それを構成する大勢の人びとの永年の‘意識’の所産でもあるわけで…。

最後の私の行文、“良書には影響力がなくてはならない”という前提を持っていたのが、マチガイなのかもしれません…。
  • へうたむ
  • 2009/03/29 1:14 AM
おはますようござい。
と言うよりご無沙汰しています。Shiraishi改めNESAです。
上手く言葉に表すことは難しいのですが、読んでいて非常に共感できます。
麻生自民党発足時から「まずは、景気だ。」のポスターを全国各地で見ることができます。
地方の状況は非常に悲惨です。定額給付金の交付が全国各地で始められつつありますが、納税者に対する税の還付という要素にとどまらず、納税することができない層にも行き届かせるという点だけは評価できると思います。
国の財政を考えると、個人的には賛成できないのですが、納税することのできない層をどうにかしようと考えたことだけはそれなりに評価できると思います。
思うに、世の中にはこれだけブログが広がり、多くの国民が毎日執筆し、そして閲覧しています。それを見ると多くの国民がそれなりに良識を持ち、現在の体制に甘んじることを潔しとしていないことを読み取ることができます。国民はそこまで馬鹿ではないということをつくづく実感します。
なのに、それらは大勢の流れを変えることができない。そのことをもどかしく感じている人たちも決して少なくないように思われます。
  • NESA
  • 2009/04/08 5:54 AM
Shiraishiさん改めNESAさん、コメントありがとうございます。

たしかに大勢の方たちが、自身の考え、想いをブログとしてインターネット上に公開する時代になり、“みんな、考えとるぞ!”という流れになったことはいいことです。でも、一流の執筆者による書物の言説ですら、「出版=公開 publish された」というだけの蓄積に終わっている、という感から、この記事を書きました。もっとも、マルクスのようにほんとーに‘影響を与え(過ぎ)る’書物も恐いっちゃ恐いですが^^。

>なのに、それらは大勢の流れを変えることができない。
そこ、ですね。選挙のところなんか、まさに。“誰が当選しても同じ”という、テレビの街頭インタヴューや、私どもの会話でもお馴染みのフレーズ、これが元凶です。川の水は流れるから腐らない、が、溜まり水は腐る、のです。川の水が流れ去ったあとに、美酒が流れてくるわけではありません^^ ― ドン・ペリもレミ・マルタンも流れてきません! が…流れるから腐らない、のですが、人びとはこれに気づかないのです。あ、これ、選挙が近づいた時期に記事にしまス^^。― もちろん、‘水質管理’が不要というのでは全然ありません。でも、それは、流れるようになったあとです。
  • へうたむ
  • 2009/04/08 5:45 PM
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