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TO BE or TO DO

 ‥‥私的にこうキツい状況だと、逃避癖の強い私^^;は、‘スピリチュアル系’に行きたくなりがちだ。― で、ブッ○オフでうろついていると、鈴木秀子『愛と癒しのコミュニオン』(文春新書、1999年)が目に入り、パラパラとめくってみると、基本的にはコミュニケーション理論、カウンセリング分野の書物なのだが、もうちょっとスピリチュアルな‘癒し’本として興味をそそられて、買った。

鈴木秀子『愛と癒しのコミュニオン』 人間関係のトラブルに対処する方法を論じた書物としては、ジャンポルスキー『やすらぎ療法(セラピー)』(春秋社)を読んだことがあり、ひたすら‘許す’ことを説く論調にすさまじい違和感を感じた。その後、実際にトラブルに遭遇したとき「もういちど謙虚に再読して、試してみよう」と思って読み、できるだけ書いてあることを試したつもりだが、全然効きめ^^がなかった。
 ジャンポルスキーの論は、むしろ自立・自己宣伝・責任の過度な重視に明け暮れるアメリカ社会の病根を露呈するもので、アメリカの現状にこそ効果を持つが、日本のように、社会生活では自己主張や怒りは押さえつける精神風土では、同じ方法を薦めるのは危険ですらある、と思った。

 しかし、鈴木さんの該書は、そのような、単調な「許し」を説かず、冷静な「聞く」、「受け容れる」態度を基本とするところに深いものを感じる。著者の説く「アクティブ・リスニング」は、話し手に対する価値判断をひとまずすべて棚上げして聞く、ことがミソなのだが、第2章「自分に聞く」で、自分の感じている実感を、それが自分であると受け止める「自己一致」へのプロセスのひとつとして「天使になって、自分を観察する」ことをあげていて、映画『ベルリン・天使の詩』の天使のまなざしで自分を見守ることを説いている。
 さて、これが実践できるかどうかは‘?’だ。とりあえず、自分の後頭部の数十センチ上あたりから‘守護霊’が私を見るように? 自分を見ているつもりになろうかな。それがどんな変化をもたらすのかわからないけれど^^。
 この本では、いろいろ示唆深い行文があったが、第4章「大宇宙に聞く」の「「ドゥーイング」の世界と「ビーイング」の世界」(161頁〜)は、‘ひと’のきわめて根源的な問題を語っていて感銘深いが、しかしそれゆえ現実の世界でのその発現? のありようは困難を極めそうだ。

 「ビーイングの世界、つまり無条件の世界では、人は誰でも許され、充足感や安堵感、親密感、自分をとても大切に思える尊重感、自尊心、自分はこれでいいのだという自信を持つことができる」(以下、青字は引用)が、「日常生活の中で私たちは、ビーイングを忘れ、ドゥーイングの世界、つまり条件で動く世界に埋没してしまいがちだ。」そこでは、母親は子どもに「あなたはよく勉強するから、ごほうびをあげます」、「そんなに悪い子だったら、お母さんはあなたのこと知らないわ」と言ってしまう、という次第。

 これは、そのように言われればまことにそのとおりの、私たちの‘生’のありようだ。当然のことながら、著者は「コミュニオンとは、私たちが本来、持っているビーイングにおける人と人のつながりに気づ」き、「‥‥人間と自然や宇宙との調和を取り戻し‥‥喜びに満ちて生きること」だ、という。

 いっぽう現実を見れば、「ドゥーイング doing」の基準だけが人の社会・経済・物理的生活を支配しきっているばかりか、その度合いが日々強まっている。「あなたは働かないけれど、存在 being に価値があるから給料を払う」、あるいは「あなたの労働は何ももたらさなかったけれど、あなたの存在に価値を認めるから、給料を払う」などとは、著者の鈴木さんがオフィスを経営したとしてさえ、言わないだろう。
 そこで、この‘論=アイディア(理想)’は、いったいどうやって現実の中に活かされることが可能なのか、そちらが課題なのだ。

D.ピート『シンクロニシティ』 拙ブログの、だいぶん以前のエントリでも触れたが、‘シンクロニシティ’についての興味深い、そして良心的と思われる概説書、デイヴィッド・ピート『シンクロニシティ』(サンマーク文庫)にも、まったく異なる視点から、同じことが書かれている。

 「おおくの人々にとって、生活にたいする反応は機械的なものとなってしまったために、創造性がはたらく機会は、ほとんどのこされていません。そして自己は時間の逐次的秩序に執着するあまりそれにとらわれてしまい、そのなかでなんとか限界からのがれようと、たえず必死にもがいています。この変化をめざす努力そのものにおいて、創造性は遮断され、自己は存在(ビーイング)ではなくたえざる生成変化(ビカミング)の感覚につきまとわれるようになるのです。」(405頁)

 ここで、ピートの言う「ビーイング」はそのまま鈴木氏の「ビーイング」と言えようし、ピートの「ビカミング becoming」は鈴木氏の「ドゥーイング doing」に相当すると言っていいだろう。
 ピートに言わせれば、「ビカミング」(=何ものかに成ること)に向けて努力(= doing)すればするほど「創造性」は枯渇する、という、一般の考えとは逆のようなことが真相だというのである。
 旧エントリでは、当時、不条理に殺害された事件の被害者について、メディアが“被害者の夢を断った…”という表現を常套化したことに不快を覚えたことから、ピートの文章を引いたのだったが、あのようなメディアの報道の仕方も、社会が「ドゥーイング/ビカミング」の価値観、人間観に、いかにどっぷりと浸っているかを露呈している。いなむしろ、マスメディアは、「ビーイング」の価値観が萌芽するごとに、躍起になってツブシにかかろうとし、人の‘生’の根源をすら「ドゥーイング」で枠づけることを、八方手を尽くして画策するごとくだ。

 皮肉にも、‘よい位置を占めた’人たちのみは、その高い社会的ポジションを保持した「ビーイング」=存在(であること)を継続できるという温床! だけは長らく育てられてきたことを、最近の天下り容認の政令などがきっちり示している。― もちろんこれは冗談で、このような社会的地位に‘ある’ことは、鈴木氏やピートが言う「ビーイング」とは全く違うことだ。

 で‥‥けっきょく、当たり前と言おうか、どうやって「ビーイング」を現実化させるのかは、わからない。自分でできること、という範囲では、可能なかぎり、接触した他者を、その「行為=ドゥーイング」で評価せず、在るがまま、振る舞うがままに認める、ということなのだろか。
 そして、しかも職業生活においては、「やったこと=ドゥーイング」しか評価の対象にならない、という基準は、そのままなのである。

 けれども、「ドゥーイング」に固着しきった産業界とアート・シーンからは、実質の果実が危機的に枯渇してきているのではないか。
 業績・実力主義を飽くなきまでにきわめ尽くす企業社会から出てくるものは、何なのだろう。戦後、ずっと変わらないスシ詰めの通勤電車の中で楽しむ、携帯電話、携帯AVプレーヤーのサーヴィス向上をひたすら競う。“日本のアニメは文化”と言っているうちに、同工異曲の乱作は、ある日、海外から「え? 日本のアニメ? 昔は面白かったけどね」で見放されかねない。“Kawaii”の‘JK’ファッションだって、欧米人の好奇心のちょっとした対象になっているだけでは?
 しかも、こういった、携帯電話、アニメ、アパレルの労働現場では、人びとはものすごいストレスに曝されていて、鬱病にかかる人が激増している。

 この先に何があるんだろう。

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  • 2017.08.15 Tuesday
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