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「山口昌男」の文庫本

 CDに続いて本も、少しばかりではあるが入れ換え・手放し検討中。

山口昌男文庫本集

 並べてみたのは、文化人類学者・山口昌男氏の、手持ちの文庫本群。
 この中では、今回の単行版からの買い替えは下段左の『知の遠近法』のみ。
 文庫・新書にはほとんど書店でくれる紙カバーをかけているが、はぎとって並べた。なかなかカラフルだ。

 文化人類学者が専門という‘公称’ながら、ものすごい多読・博識により、文化全体の批評家といった趣きがある人だ。
 取扱うテーマ、論述の鋭さと超-博引傍証の資料とにより、すでにカリスマの位置にあるが、このところはさすがに「過去の人」になりつつあるようにも感じる。

 上の6冊の中で、お恥ずかしいが通読しているのは右上の『本の神話学』(中公文庫。文庫につき刊年を記してもあまり意味ないので省略)だけ。学部時代に単行書を入手し、興奮しつつ読み終えた。
 今は、この文庫版も品切れのままらしく、これは残念。

 下段右『道化の民俗学』は、ちくま‘学芸’文庫に入っており、まとまった連載の単行化で、寄せ集めではない。これはちゃんと読まねば、とこれは置いておこう。

 上段左の『道化の宇宙』(講談社文庫)などは版元の性格もあって、すぐ消えて久しい。白水社刊の単行版のほうが古本市場に多いかも。
 この本は、手放してしまおうと思ったのだが、古書価が出ているわけでもないし、拾い読みしていた本だが、「コラージュとしての伝記」の中で、当時続けて出版されたシャネル関係の本への言及があって、手許の‘シャネル本’について記事にしようと思っていた折から、手放せなくなってしまった。

 この本では、著者は他のところ(「ヤポネシアの彼方へ」)で、
 「数年前あるアフリカ人の教育家と話をした折、日本の近代をどう説明するかときかれた。その時、私は失敗に対する狭量、非寛容性、異質なものに対する憎悪と言えるのではないか、と説明した。この糞まじめ主義と結びついた異質なものに対するむき出しの憎悪感情の根は意外に深いようであり…」(146頁)
云々と言っている。

 これだけだと、よく言われていることでもある、といえるかもしれない。山口氏のトレードマークは、この‘糞まじめ主義’を笑い飛ばして転倒させる「道化」であった。
 私自身は、周囲から異質扱いされると同時に、自分の中に、この山口氏のいう「糞まじめ主義」による「非寛容性」がずいぶん巣食っているようにも実感するので、複雑に受け止める。

 山口氏の著書が、若いインテリたちに熱狂的に読まれていった時期が通り過ぎ、見えてくるのは、この山口氏の「道化による引っ繰り返し」が、さして成功を見ないうちに失効してしまった光景のような気がする。

 山口氏は、音楽に関してもいろいろ書いていて、エリック・サティ論(「エリック・サティとその世界」、『道化的世界』所収)なども面白そうだが、サティは実は私には最も無用な作曲家なのである。
 ヒンデミットやミヨーのレコードを集め始めていた時期、山口氏の論に触れられる海外盤は、「手に入れてみたい」憧れだったが、今はほとんど手放している。
 私にはフルトヴェングラーやクレンペラーの‘糞まじめベートーヴェン’のほうがぴったりくるのだ^^;。

 下段左の『知の遠近法』(岩波現代文庫)は、単行版からの置き換え。2章ほど割愛されているが、まあいいだろう。
 この本は、大学の研究者が、初めて野口晴哉の整体に言及した、という点で捨てられないのである。
 『風邪の効用』は、『知の遠近法』の言及で‘整体村’から外に飛び出した感もある。

 『本の神話学』にもどると、この本の随一の功績は、アビ・ワールブルク(ヴァールブルク Aby Warburg)と、その蒐集資料を元に大きな研究を成した‘ヴァールブルク学派’の意義を明らかにしたことだ ― とまあ書く必要もないけれど。
 『本の神話学』中、3つの章がこれに関わる。これらが、その後の日本の、西洋ルネサンス思想史・美術史研究に及ぼした影響は測り知れないのではないか。

 周知ではあるが、このヴァールブルクの一族は、銀行家として活躍した一族で、ちょっと前、この事件だったかで不名誉な報道をされた「UBSウォーバーグ証券」という名を耳にしたけれど、この「ウォーバーグ」がヴァールブルクなのである。

 アビ・ヴァールブルクの著書(講演)が岩波文庫に入ったというのは知らなかった。
 こちらには、その紹介とともに銀行家ヴァールブルクのことも触れてあり、ブロガーの識見の広さが感じられる。

 それによると、現・UBSの源流のひとつにある SGウォーバーグの創立者・シグムンド・ウォーバーグが、銀行家として大成したようだ。
 こちらには、その‘社風’みたいなものを、好悪こもごもながら書いていて、面白い。
 シグムンド・ウォーバーグについては、あちらの Wikiをどうぞ。
 顔写真があるが、漱石ふうに俯いて手を額にあて、‘考える人’のアビの肖像に対し、いかにも実業家。

 ちなみに、この一族からチェリストが出ている。 ジェラルド・ウォーバーグ Gerald Warburgという人だ。
 レイモンド・コーエン Raymond Cohenのヴァイオリン、ノーマン・デル・マー指揮ロイヤル・フィルで、ディーリアスのヴァイオリンとチェロのための協奏曲を、英Pyeレーベルに録音している。

 手許にある、ボッロボロの『Penguin Guide to Bargain Records』(Penguin Books、1966)では、
 「This performance was made possible by the generosity of Gerlad Wauburg, a member of an American banking family as well as a talented player …」(118頁)
とある。「Gerlad Warburg」は‘ママ’で、珍しい名前だなー、と思っていたが、ネット時代になって調べると、Geraldの誤植だったようだ。

 この音源は、Pyeの版権が EMIに買い取られ、バルビローリの録音などがたくさんCD化されたのちもCD化されていない。
 YouTubeのこちらに、2ファイルに分けてアップされている(後半もリンクあり)。
 上記『Penguin Guide』によれば(ネット上にもあるが)、英PyeのLPの番号は、モノ盤 GGC 4073、ステレオ盤 GSGC 14073。

 指揮者ノーマン・デル・マーは、イギリス音楽好きにはよく知られた人で、子息のジョナサン・デル・マーは、あのベーレンライター版ベートーヴェン交響曲全集を校訂した人だ。この版は、私は今のところ、キライ^^。

 では〜。

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  • 2017.10.23 Monday
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